「ブックマン」第7回 14年周期の歴史の教訓 

『近現代史からの警告』
         保阪正康著 講談社現代新書

 筆者の保阪さんは、明治国家の成り立ちからの近現代史を「14年周期」の視点から、現代に生きる私たちに警告的に「歴史の教訓」について述べています。伊藤博文が、「近代化をめぐる14年」を作り、1895(明治28)年日清戦争で清から、日本の国家予算の3.3倍にあたる賠償金を獲得して味をしめました。ここから明治政府は明確に対中国への帝国主義的膨張路線に入ります。1932(昭和7)年に満州事変を起こし、「戦争の14年」の後に日本社会が瓦解します。戦後も、アメリカとの関係の14年を経過して、「高度経済成長の14年」を躍進的に進み、現在に至ってきたと述べています。そして、戦後の歴史学が演繹的な唯物史観が支配的であったことに対し、同氏は資料や事実の分析から帰納的に研究する立場です。冷戦構造が崩壊した現在、科学と真実(事実)に基づく、歴史認識が必要ではないかと思います。特に、第7章で新型コロナ禍における日々の辛さは、実はファシズム体制の怖さを体験することにつながると指摘されています。噛みしめたい警告です。

                      (文責:代表理事 五百木孝行)

5月 26, 2021