『ブックマン』第4回 「精神の自由」が照らす光芒と警鐘 

「暗い時代の人々」 森 まゆみ著 亜紀書房

 9月18日は、今から87年前、1931(昭和6)年、中華民国奉天郊外の柳条湖において旧関東軍の線路爆破で始まった満州事変の勃発の日です。日本はそれから、1945年の敗戦までの約15年間の戦争の時代と入っていきます。本書は、筆者の「満州事変勃発から太平洋戦争終結にいたるまでの、あの暗い時代。人々は何を考えていたのか、どこが引き返せない岐路だったのだろうか」の問題意識の中で、「精神の自由」をかかげて戦った10名の人たちの生きざまを、希望の光芒として照らしています。
 「斎藤隆夫」「山川菊枝」「山本宣治」「竹久夢二」「久津見房子」「斎藤雷太郎と立野正一」「古在由重」「西村伊作」の人たち。私が名前だけでも知っていたのは半分くらいで、自分の無知をいまさらのごとく自覚したところです。
 1911(明治44)年、明治政府は明治天皇暗殺計画をでっちあげて幸徳秋水を始め12名を死刑に処します。唯一女性で死刑になった菅野スガは、久津見房子の先輩らしい。この時代、女性は無権利の状態に置かれており、男性運動家との関係でも必ずしも対等ではなかった。しかも命を奪われる恐れがある中で、社会主義運動に飛び込んでいった山川菊枝や久津見房子たちの女性活動家の矜持に、現在につながる民主主義のありがたさに感謝します。
 次に、斎藤雷太郎と立野正一の実践です。京都四条木屋町を下った高瀬川沿いにある「フランソワ」という喫茶店をご存知でしょうか。スパニッシュ風の青灰色の外観の店。立野正一が1934年に開業し、太平洋戦争中、反ファシズム統一戦線の小さな新聞「土曜日」を出す斎藤雷太郎を支えていた。当時、治安維持法が猛威を振るっていた頃、小さな新聞「土曜日」が多数の人に読まれていたのは奇跡です。これまで何気なく、雰囲気のある店と行っていた喫茶店にそんな歴史があった。コーヒーの味も変わります。
 本書は、国体護持、治安維持法による政治的弾圧下においても、思想・信条の「精神の自由」のために生き抜いた10名の軌跡を紹介しています。現在において政治の私物化、偽造、改竄が進み、一方で共謀罪、改憲の動き、メディアへの介入。そして自衛隊の海外派兵の動き。また来た道への先人からの警鐘です。(文責:代表理事 五百木孝行)

9月 19, 2018