『ブックマン』第3回  ―「日本の失敗」の真実 

「データでみる太平洋戦争」 高橋 昌紀著 毎日新聞出版

 1941年12月から始まった太平洋戦争は、1945年8月15日に日本の敗戦で終わった。いや本当は、1937年から始まった日中戦争から始まっていた。そのことを本書は、特に太平洋戦争の具体的なデータから評価・論説をしているのが、この本です。日本政府は、1937年~1945年間で230万人が戦没したと認めています。その約6割が「餓死」と言われています。「餓死」が多いのは、兵站を軽視した日本軍指導層の作戦指導にあったと指摘しています。それに引きかえ、アメリカは、一兵士に至るまで遺骨の確認を行っています。先日の米朝会談の成果によって1950年の朝鮮戦争で戦死した米兵の遺骨55体を北朝鮮より返還を受けております。それに引きかえ、日本兵の遺骨は未だ多くが不明のまま、戦後73年異国の地で雨露にさらされたままです。
 本書の中で半藤一利氏はインタビュー記事で「(前略)兵卒は所詮、一銭五厘で集められる存在。作戦時には3日間分の食糧であるコメ6合など25キロの荷物を背負わせ、前線へとおっぽりだした。食糧がなくなれば、現地調達しろと」。このような兵隊に対する対応は、およそ近代国家の軍隊とは言えないといえますし、国民に対しても同じように戦争動員にかりたてました。竹やり訓練などは端的な例だと思います。
 8月15日のNHKスペシャルで、「ノモンハンの真実」が放送されました。1939年に起こったノモンハン事件は、ソ連軍機械化部隊の大攻勢に日本陸軍第23師団が一方的に大敗を喫した国境紛争事件です。現地軍の暴走を許した無責任体制、情実人事・情報軽視について真摯な総括がされずに、現場に責任を押し付け、同じ体質で2年後の太平洋戦争へ突入したと告発しています。ここに一兵卒や一国民に犠牲を押し付ける旧日本軍の縮図があります。そして戦後、戦争指導層は国民に対して謝罪と責任を果たしているとは言えません。8月のこの時期だけではなく、戦争を考える一冊を皆様に紹介していきたいです。まさに地震、大雨、台風だけではない国民の命にかかわることなのです。今後しばらく庶民の目から見た戦争について考えていきたいと思います。 (文責:代表理事 五百木孝行)

8月 16, 2018